弁護士の深尾至と申します。今回は、過労死の業務上外認定についてお話いたします。
過重労働によって過労死が発生した場合には、ご遺族としては、労基署に労災申請をして各種給付等を求めることが考えられ、労災申請の結果、過労死が業務上(「業務上」の概念簡易な説明として、原田社会保険労務士執筆の記事をご参照ください。)発生したと認められる場合には、労災法の各種給付を受けることができます。
過労死の業務上外認定については、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」との行政通達があり、労基署は基本的にこの通達に従って過労死が業務上発生したかどうかを判断します。
通達は、著しい疲労の蓄積をもたらす過重労働により発症した脳・心臓疾患について、業務上認定するものとしています。
そして、著しい疲労の蓄積をもたらす過重労働といえるかどうかの判断に際し、「発症前1~6か月間にわたって、1か月あたりおおむね45時間を超えて時間外労働が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まる」、「発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2~6か月間にわたって、1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働がある場合には、業務と発症との関連性が強い」と評価できることを踏まえるものとし、上記の判断に際しての労働時間の評価の目安を示しています。
過労死が業務上認定されなかった場合には、ご遺族としては、行政訴訟をもって不支給処分の取消を求めることが考えられますが、裁判例においては、上記通達は裁判所を拘束するものではないとして、上記通達の基準に必ずしも該当しない場合にも、過労死の業務上認定をする例もみられます。
少なくとも企業としては、上記通達の労働時間の評価の目安を踏まえた従業員の労務管理が必須といえるでしょう。