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弁護士ブログ

労災補償の対象はケガだけ?

2020年9月30日
名古屋丸の内本部事務所 社会保険労務士 小木曽 裕子

近所で建物建て替えのための解体工事が始まりました。少し様子を見ていると、外国人労働者を含めた4名程度で、1人はクレーン車の運転、1人は粉塵が飛散しないよう解体物への放水、残りのメンバーはクレーン車が解体した木くず等をトラックへ積み込んでいるようです。
職業柄、労働関係法に絡めて様子を窺ってしまうのですが、この作業員の方たちは労働者か?請負か?労働者であれば安衛法や労災補償の対象となるな・・など。様子を窺っているだけなので、もちろん身分関係は分かりませんが。
建設現場では、高所作業や、重機を用いた作業等の危険と隣り合わせの作業が多く、そのため労災事故が発生しやすくなっています。解体作業においては、重機で崩した瓦礫の下敷きとなり打撲することや、手作業で刃物を用い解体を行い、誤って自身の手を切ってしまうといったケガが考えられますが、このような負傷が労災に該当することは多くの方がご存知かと思います。
では、陽当りの良い現場での作業が長時間に亘ったことにより、熱中症で倒れてしまった場合はどうでしょうか?この場合も、一定要件を満たす場合は、労災補償の対象となります。
ケガと違い、疾病の場合は目に見てはっきりと「仕事が原因で発生した」とは分かり難いため、労災請求をしない人も多いように思いますが、熱中症や腰痛、振動障害等の疾病も一定要件を満たす場合は労災補償の対象となります。
10月となりますが、日中陽当りの良い場所はまだまだ暑さを感じますので、熱中症には十分にお気をつけ下さい。

新型コロナウイルスと労災申請

2020年8月31日
名古屋丸の内本部事務所 社会保険労務士 大内 直子

 厚生労働省の発表によると、令和2年8月25日18時 時点で新型コロナウイルス感染症に関する労災請求件数は計983件あり、そのうち424件が認定されました。医療従事者等の請求件数が810件(うち365件認定)と最も多く、その他 運輸業、郵便業の方、宿泊業、飲食サービス業の方など、多岐に渡る業種の方が申請、認定を受けています。医療従事者の請求が多いのはもっともですが、医療従事者以外の方はどうでしょうか?同じく令和2年8月25日18時 時点の発表によると、医療従事者以外の請求件数は166件(うち53件認定)、海外出張者の請求件数は7件(うち6件認定)という状況です。この数字を見ると、医療従事者以外の方の請求件数等はやや少ない印象です。もしかすると自身の感染が労災に該当するのか分からず請求していない。会社の協力を得ることが難しく諦めてしまった。という方もいて、実際はもっと多くの方が請求すべき状況なのかもしれません。

 新型コロナウイルス感染症で労災認定を受けるには感染経路が特定されていることが必要です。しかし場合によっては感染経路不明でも認定を受けることが可能です。では、感染経路が判明しない場合、どのように認定の判断がされるのでしょうか?
厚生労働省によると、以下のような見解が出されています。

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調査により感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる次のような労働環境下での業務に従事していた労働者が感染したときには、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められるか否かを、個々の事案に即して適切に判断すること。この際、新型コロナウイルスの潜伏期間内の業務従事状況、一般生活状況を調査した上で、医学専門家の意見も踏まえて判断すること。
(ア)複数の感染者が確認された労働環境下での業務
(イ)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務

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つまり、感染経路不明の場合でも(ア)(イ)の様な業務を行っていた方は感染の可能性も高く、個々の事案に即して判断してもらえるということです。上記(ア)(イ)のような業務を行っていた方で、業務外で感染したことが明らかでない場合には、今一度ご自身の感染時の状況を整理し、申請を検討してみるのも良いかもしれません。
 もし会社が申請に非協力的な場合はご自身で申請することも可能です。その様な場合の申請方法については、労働基準監督署や専門家へのご相談をお勧めします。本当に必要としている方に適切な給付がなされることを願うばかりです。

最近の報道から

2020年7月31日
春日井事務所所長 弁護士 深尾 至

報道によれば,7月29日,トヨタ自動車株式会社の男性社員(当時40歳)が2010年に自死したのは過重労働と上司のパラーハラスメントが原因であるとして,男性社員の妻が労働基準監督署による不支給処分の取消を求めた訴訟の判決において,名古屋地裁は,原告の請求を棄却したとのことです。
 以前に投稿したブログにて述べたとおり,裁判例においては,行政通達は裁判所を拘束するものではないとして,通達の基準に必ずしも該当しない場合にも,業務上認定をする例がみられます。今回の判決は,労働基準監督署と同様に業務上認定をしなかったことになりますが,通達の基準との関係についてどのような考えを前提にしているか等は報道からは明らかではありません。
 判決内容の詳細が確認できていないため,内容に立ち入ることはできませんが,原告側は控訴を検討しているとのことであり,今後の動向に注目したいと思います。
※本投稿は令和2年7月30日時点で参照した情報に基づくものです。

業務委託契約と労災保険

2020年7月15日
名古屋丸の内本部事務所 社会保険労務士 大内 直子

働き方には、正社員やアルバイトのように雇用契約に基づくものもあれば、会社(注文主)から依頼された仕事を完成させることを契約内容とした「業務委託」や「請負」もあります。
業務委託や請負で働く場合、通常は労働者としては扱われないため、業務中に労働災害が発生しても労災保険の適用はありません。
とはいえ、業務委託や請負契約として業務を遂行していても、その実態は労働者性が高いと判断されれば、業務委託や請負契約であっても労働者として労災保険が適用される可能性があります。
具体的には、業務委託契約であっても、注文主から業務場所や業務時間等が管理されていたり、業務委託の報酬が仕事の成果に対してではなく、業務に遂行した時間により支払われている等すると、業務委託契約は形式的なもので、実態としては労働者性が高いと判断され、業務の過程で労働災害が発生すれば労災事故として認められる可能性があるわけです。
労災保険法の適用をめぐって、労災保険上の労働者性がポイントとなる場合があります。
労災保険についてご相談がありましたらご連絡ください。

労働者死傷病報告

2020年6月30日
名古屋丸の内本部事務所 社会保険労務士 小木曽 裕子

労働災害により従業員がケガ等をした場合、指定医療機関で治療を受けたり、休業をすることがありますが、このような場合には労災保険から必要な給付を受けるために労災補償給付の請求手続きを行いますが、労災事故が発生した場合には、これ以外にも必要な手続きがあります。
それは、「労働者死傷病報告」の提出で、具体的には、労災事故等で従業員が死亡や休業を要した場合に提出が必要となります。
この「労働者死傷病報告」の提出期限は、休業をした日数により異なり、休業4日以上もしくは死亡の場合は、災害発生後遅滞なく労働基準監督署へ提出しなければならず、休業が4日未満であれば、1月から3月、4月から6月、7月から9月、10月から12月と3ヶ月ごとに発生した労働災害を取りまとめて該当する期間の最後の月の翌月末日までに報告します。
労災事故が発生したとしても、労働者が仕事を休まなかった場合や特別加入をしていない会社経営者の場合には、労働者死傷病報告の提出は不要となります。
労災保険を使用しない場合でも、労働者死傷病報告については必ず提出する必要があり、これを行わない場合には、労災隠しとして送検されるケースもありますので、ご注意下さい。